土祭&成井恒雄展in益子

 「土祭」と書いて「ひじさい」と読む。3年に一度の、9月の新月から満月にいたる期間、焼き物の町として知られる栃木県益子町で開かれる土にまつわる祭りだ。
 歴史は浅い。第1回は2009年9月で、「窯業と農業の町として、足元の土を<命を循環させるすべての原点>として捉え直し、感謝をし、そこから新しい暮らしのあり方を見出していこう」(同実行委員会HPから)と始まった。その際、「古代の土や泥の呼び方のひとつ『ヒジ・ヒヂ』を用いて『土祭/ヒジサイ』という名がつけられた」(同)。
 第1回の祭りでは旧市街地を会場に、作品の展示やセミナー、ワークショップ、演奏会などがおこなわれた。祭りはそのご年ごとにさかんになり、いまでは春と秋の「陶器市」とはまた違った、益子に根ざした新しい文化的な催しとして定着している。
 その祭りがまたやってくる。ことしは、9月12日の新月から28日の満月までの期間、開かれる。
 祭りではさまざまな催しが企画されている。陶器、染色などの作品展示のほか、トークセッションやワークショップ、演劇、朗読、演奏、映像などの公演、上映もある。詳しくは実行委員会のHPをご覧いただきたい。

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 この企画の一つとして、「成井恒雄展」(9月12日~30日)も開かれる。これには成井氏にゆかりのある作家たちの作品も同時展示されることになっていて、池田泰教(映像)、高山英樹(木・陶)、能登実登利(陶・絵)、町田泰彦(文)、村田昇(写真)、安田麻由子(染)の各氏に加え、わが娘も成井窯(陶)として参加する。会場は益子駅に近いギャラリー「pejite」。

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 なお、映像の池田泰教氏は福島県郡山市出身の映像作家で、2014年の<福島映像祭2014>では同氏の手になる「3 PORTRAITS and JUNE NIGHT」が上映された。これは成井恒雄氏ら益子の陶芸家の姿を追った2009年制作作品の続編で、東日本大震災と成井氏の死去が重なったあとの、遺された窯とそこにまた新しい命が吹き込まれようとする様子が池田氏独特の静謐な色調で描かれている。

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            「3 PORTRAITS and JUNE NIGHT」より

 土祭では、きっと、新しい視点からのひと味違った益子のかたちを見ることができるはずだ。楽しみにしている。