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「国営放送」へと進むのか、変質するNHKの報道

 集団的自衛権の行使容認問題で菅義偉官房長官へのインタビューを放映した7月3日放送のNHK「クローズアップ現代」が関心を集めている。火をつけたのは7月11日発売の週刊誌『フライデー』。同誌は「安倍官邸がNHKを "土下座" させた一部始終」の大見出しで、NHKにたいする官邸サイドからの介入を報じた。
 記事によると、同番組終了後、国谷裕子キャスターの質問内容が菅官房長官の秘書官からクレームがついた。そして、さらにその数時間後、〈再び官邸サイドからNHK上層部に「君たちは現場のコントロールもできないのか」と抗議が入ったという。局上層部は『クロ現』制作部署に対して「誰が中心となってこんな番組作りをしたのか」「誰が国谷に『こんな質問をしろ』と指示をしたのか」という ”犯人探し" まで行った〉(『フライデー』)という。

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 その真偽はわからない。しかし、「政府が右というのを左というわけにはいかない」と発言した籾井勝人氏を会長に据えるなど、NHK人事たいする安倍政権の露骨な介入をみれば、十分にあり得る話だと思える。なにより、そのときのキャスターと官房長官のやりとりを聞くと、心中穏やかでなかったことが読み取れる。
 そのほんの一部を「NHKオンライン」テキスト版から引用する。

【国谷キャスター】憲法の解釈を変えることは、ある意味、日本の国の形の在り方を変えることにもつながると思うが、国際的な状況が変わったということだけで、解釈を変更していいのかという声もあるが?
【管官房長官】これはですね、逆に42年間、そのままで本当によかったかどうかですよね。
 今、大きく国際化という中で変わってることは、これ、事実じゃないでしょうか。
 そういう中で、憲法9条というものを私たちは大事にする中で、従来の政府見解、そうしたものの基本的論理の枠内で、今回、新たにわが国と密接な関係がある他国に対する武力攻撃が発生して、わが国の存立そのものが脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険という、そういうことを形の中に入れて、今回、閣議決定をしたということです。
 (中略)
【国谷キャスター】憲法上、集団的自衛権の行使が容認されるとなると、非常に密接な関係にある他国が強力に支援要請をしてきた場合、これまでは憲法9条が大きな歯止めになっていたが、果たして断りきれるのか?
【管官房長官】ここは新要件の中に、わが国の存立を全うすると、国民の自由とかですね、そこがありますから、そこは従来と変わらないというふうに思ってます。
(【国谷キャスター】断りきれる?)
【管官房長官】もちろん。
 (中略)
【国谷キャスター】もし密接な関係のある他国のために集団的自衛権を行使した場合、第三国を攻撃することになって、第三国から見れば日本からの先制攻撃を受けたということになるのでは?
【管官房長官】こちらから攻撃することはありえないです。
(【国谷キャスター】しかし集団的自衛権を行使している中で、防護…)
【管官房長官】ですからそこは最小限度という、ここに3原則という、しっかりした歯止めがありますから、そこは当たらないと思いますよ。
 *【】内は筆者注

 同番組を見ていた人ならよりわかると思うが、このテキストからも菅官房長官の狼狽ぶりがうかがえる。それが、腹に据えかねたのだろう。せっかく自分たちの言いなりになる体制にしたというのに、この為体はなんだ、というわけだ。
 これについて、菅官房長官は11日の記者会見で、「事実とまったく違う」と否定したそうだ。が、「赤旗政治記者」のツィッターによると、〈「抗議するか」との質問には「するかどうかは考えてませんが、事実と全く違うので、抗議した効果があるかどうかも含めて考えたい」と述べた〉という。
 行け行けどんどんの政権がなんという弱腰か。違うというなら、抗議でも訴えるでもしたらいいではないか。

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クローズアップ現代」と国谷キャスターのジャーナリストらしい態度は評価するとして、しかし、安倍政権になってからのNHKの報道番組は、日を追って変質の度を強めているように見える。なかでも、看板のニュース番組「ニュースウオッチ9」の政権へのすり寄りぶりは、目に余って際立っている。
 たとえば、集団的自衛権行使容認の「閣議決定」直前の6月26日と27日。山口公明党代表と高村自民党副総裁をそれぞれ生出演させた同番組はほとんど「よいしょ」、提灯持ちか幇間のようだった。「閣議決定」前日の30日の放送も同様。このとき、官邸前では大規模な反対行動が繰り広げられていたが、番組は長崎市で開かれた反対の市民集会だけを付け足しみたいに報じただけで、これを一切伝えることはなかった。
 一方、民放は、「報道ステーション」(テレビ朝日)も「ニュース23」(TBS)も、これを大々的に取り上げた。それが、報道番組としての真っ当な姿だろう。
 NHKは、公共放送としての立場も責任も投げ捨てようとしているかのようだ。百田尚樹経営委員がいみじくも言ったように、政権の覚えめでたい「国営放送」になろうとしているのか。本当なら、内部から、これを正すようなまともな意見が出てきてしかるべきだが、いまのところ、労働組合も含めてそういった話は聞こえてこない。
 NHKの姿勢はこれからも注視していかなければならない。そのうえで、もし、こうした御用放送がつづくなら、視聴料を払うのがはたして妥当なのか、真剣に考えなければなるまい。