中学教員過労自死の公務災害認定に思う

 宮城県登米市の中学教員・大泉博史さんの過労自死について公務災害にあたるかどうか争われていた問題で、地方公務員災害補償基金宮城県支部審査会はこのほど、同支部が前に出した公務外認定を取り消す決定をした。
 大泉さんは登米市中田中学校で3年生を担当、進学指導にあたってきたほか、部活の顧問やスポーツ少年団の指導もおこなっていた。このため過労が重なり鬱病を発症していたが、2008年2月、授業中に乱入してきた生徒の指導にあったった直後、校舎から身を投げて自死した。
 ところが、地方公務員災害補償基金宮城県支部はこれを公務災害とは認めなかった。このため、遺族である妻の淳子さんが、公務外認定の取り消しを求めて同審査会に審査請求していた。そして今回、審査会がその認定を取り消した。
  教職員の長時間過密労働はかねてから指摘されている。全日本教職員組合(全教)によれば、教職員の1ヵ月の平均時間外勤務時間は、これ以上働けば過労死要因になる といわれている45時間を大幅に上まわる69時間5分(平日54時間17分、土日14時間48分)にものぼっている。加えて、持ち帰り仕事が20時間54 分(平日12時間9分、土日8時間45分)もある(全教・教組共闘連絡会『勤務実態調査2012』による)。

 上の表は、同じく『勤務実態調査2012』にある教職員の意識状況についてのデーターである。一目してわかるように、多くの教員が仕事にやりがいを感じている一方、仕事の内容や健康、生活などにたいしては強い不安を抱いている。
  いじめや不登校、授業についていけない子どもたちの問題は、今日、ますます深刻化している。それ故にこそ、教員たちが日々子どもたちとしっかり向き合える よう、十分な時間を保障してやることが必要だ。ところが、現実にはそれができていない。文科省や教育委員会は教職員の管理統制には熱心だが、教育環境の改 善にはきわめて不熱心なのだ。このままでは、本当にこの国の将来が危うい。